グッド・コマーシャルのグッド・コマーシャルをしたい
こんばんは、金船です。
西野亮廣さんの著書“グッド・コマーシャル”を読みました。読んで数ページで”西野節”が炸裂しています。つまりとても読みやすいし面白い。そしてこの作品が2010年には出版されていたというのが驚きです。
主な登場人物は3人。舞台脚本家を勝手に名乗る実質アルバイターの芥川、監督志望の万年ADクロサワ、そして神奈川県警の交渉人の久保。とあるきっかけで芥川がクロサワの家で人質立てこもり事件を起こし、そこに交渉人の久保が交渉に行くというのが大まかな流れになります。
銃を片手に人質をとったはいいものの、人質がまさかの自殺志願者。「俺の言うコトをきかないとお前を殺す」「お願いします」「死んじゃダメ!」…史上最低の立てこもり事件。
この煽り文を見ただけでワクワクしちゃいます。実際にこの煽り文をTwitterで見かけた時から気になっておりました。それをつい最近やっと読めたのですが、煽り文を読んだ時のワクワクは間違いではありませんでした。
小説なのであまり内容に関するネタバレはしたくないので避けます。ネタバレのない状態でそのラストを読んだ方が圧倒的に楽しめると思います。
では何をご紹介するのか。それは文章全体から滲み出るどころか溢れ出している、“西野亮廣さんらしさ”です。
キングコングのツッコミ担当でネタを書いてらっしゃって、日々炎上して嫌われ者の西野亮廣さん。そんな西野亮廣さんのらしさが地の文からセリフの部分まで、余すところなく楽しめます。
日々西野さんのブログを読んでいる方や、著書“魔法のコンパス”などをお読みになった方なら分かると思いますが、分かりやすく伝わりやすい、なおかつユーモアを交えた言葉選び。
その巧みな言葉選びに加えて、漫才を見ているようなテンポと小気味よいリズムで、圧倒的なまでに読みやすい。その上読んでいて飽きのこない文章を書けるというのが、西野さんの特技だと私は日々感じております。
その才能をフルに活用して小説という形にしているので、読んでいるのにコントを見ているような気分で読み進めていけます。(実際はコントではなく舞台用に書かれた作品のようです)
そしてこれも西野さんの考えに普段から触れている方なら分かると思うのですが、西野さんの考えていることが文章に散りばめられています。例えばこんな一文があります。
この部分は、作品を通して私が一番好きな部分です。
正攻法通りに作品を生み出すことには、夢を追う者としてやはり躊躇い(ためらい)があった。売上なんか気にならない、と言えば嘘になるが“売れるもの”には興味がない。僕は“売れなければいけないもの”に用がある。
これについてはやはり“えんとつ町のプペル”のことが真っ先に浮かびました。クラウドファンディングで集めた資金を元に、分業制で4年半の歳月をかけて製作された絵本。どこをとっても正攻法な部分はありません。
そしてその絵本の売り方にしても、絵本展を誰でも開催できるようにして、絵本を「思い出を残しておくために“必要なもの”」つまり“売れなければいけないもの”にしてしまうというトンデモ技を繰り出しています。これも正攻法ではありませんしね。
他にも細かく挙げればキリがない程に、西野さんの考え方が各所に散りばめられています。多少強引かな?と感じる部分があるかもしれませんが、それもまたわざとかもしれないと思わされてしまいます。
そして冒頭でも触れましたが、“魔法のコンパス”や“えんとつ町のプペル”が出版されたのは2016年(プペルの製作開始自体はもっと前ですが)。そしてこの“グッド・コマーシャル”が出版されたのは2010年。
もう何年も前からこの考えに至っていたということに驚きを隠せませんでした。むしろこうして文章に落とし込んでいるということは、実際にはもっと前から考えていたということになります。何年先を生きている人なんだろう。
この作品自体はとても読みやすくて面白いので、ただただ小説としてもオススメです。特にリフレッシュしたい時や、気分転換なんかにサクッと読めます。そして出来れば西野さんのブログや“魔法のコンパス”を読んだ後にもう一度読んでいただきたい。
“グッド・コマーシャル”の文章に散らばっている言葉の数々を、西野さんがどうやって現実で形にしたのか、そして今後どのように形にしていくのか。
何か行動を起こす度に炎上する西野さんを、生温い目で見守ることが出来るきっかけになると思います。
グッド・コマーシャル (幻冬舎よしもと文庫) [ 西野亮廣 ] 価格:648円 |